2クール構成予定で現在放送中のアニメ『魔法使いの嫁』。
タイトルがタイトルゆえ「ラブコメかな?」くらいの気持ちで観てみたのですが、素直に傑作ファンタジーといえるアニメです。
今回はこのアニメの特筆すべき魅力をまとめてみました。ご視聴の際の参考にでも使ってください。
※例によってストーリーに関するネタバレはありません。
◇あらすじ
羽鳥智世(はとりちせ)は生まれつきの特異体質で、妖怪や妖精といった類の、普通の人には見えないものが見えてしまう。この体質のせいで周囲から恐怖され蔑まれ、親戚中をたらい回しにされ心の行き場もなくした彼女は、自ら人身売買の商品になる道を選び、遠くイギリスの地で競売にかけられる。
商品が穢れも知らぬ若い少女とあって、集まった客たちは我こそはと競り落とそうとするが、そのとき、顔をすべて赤い布で覆った不気味な男が姿を現し、彼女を弟子にすると言って高値で落札するのだった。
彼の名はエリアス・エインズワース。今はもう絶滅寸前となっている本物の魔法使いである。
智世を弟子として買ったエリアスは、その言葉どおり彼女を自分の家に丁重に迎え入れ、妖精や怪異の存在についてや、彼女の特異体質がそれらを呼び寄せるスレイ・ベガと呼ばれるもので魔法使いとしての最高の素質であることなどを聞かせ、これからはここが彼女の居場所だと伝える。
今まではどこに行っても煙たがられ恐れられるだけで居場所と呼べるものがどこにも無かった智世は、エリアスの言葉に心から救われ、彼の正体や真意はどうあれ一緒に生きていくことを決めるのであった――
人外(じんがい)の魔法使いエリアスとの共同生活をきっかけに、智世はさまざまな人間や妖怪や怪異,さまざまな種族の者と巡り会ってそれぞれの事情や心情に触れ、命の在り様に触れていくことで己の感情を育み、幸せとはどんなものなのかを知っていく。
スレイ・ベガという特異かつ過酷な運命を背負った彼女は、エリアスの弟子として優秀な魔法使いになることが出来るのか。そして、その先で彼女たちを待っているのは、どんな未来だろうか。
◇感想 ~超常的な世界観でありながら、メッセージは極めてシンプルだ~
まずこれは愛を知る物語である。
弟子として、そして未来の嫁として智世を買ったエリアス。
ヒトでも妖怪でもない中途半端な存在である彼は、人間の思考を理解はできても、それに共感することが出来ない。人間がするように振る舞うことは出来ても、人間のような感情を持つことができない。
人間嫌いと言われ人里離れてずっと暮らしてきた彼が、人間の智世を迎えたのは、恐らく、彼女が魔法使いとしての卓越した才能を持つスレイ・ベガだからというだけの理由ではない。
彼は彼女をそばに置き一緒に暮らしていくことで、人間の感情を本当の意味で理解したいのかもしれない。根源にある理由はどうあれ、エリアスにとって彼女は実質、人間の心を学ぶための教材のようなものでもある。
その希望どおり、彼女と寄り添うように生きていく中でエリアスの「心」は少しずつ刺激を受け、新しい何かを感じていく。
智世もエリアスと一緒に過ごし様々なものに触れていくなかで、人間らしい感情を思い出していき、自分の心の輪郭を作っていく。
彼女の心が人間として十分に育ったとき、そばに居るエリアスの存在は単なる主人や師匠ではなく、別の代えがたいものになっているのであろうか。
これは智世にとって居場所というものを知る物語であり、ふたりにとって心を知る物語であり、愛を知る物語なのだ。
ふたりの心の成長を見届ける中で、我々の心もなにか大切な、シンプルなものを思い出すかもしれない。
また、これは命を知る物語でもある。
智世はエリアスと一緒に暮らし、魔法使いとしての仕事を手伝ったり、彼の多種多様な知り合いと出逢いその生き方を観たり対話したりするなかで、生まれて初めて自分の命の存在を真に実感し、「命」がなんであるか、生きるということがなんであるかを実感していく。また、魔法を知っていくことで、世界の理を知っていく。
生きることになんの希望も見いだせずかといって死にたいとも思えず、ただただ毎日をやりすごすだけだった彼女は、エリアスとの生活をとおして「自分が確かにここに居る。生きている」と感じていくのである。
その様は非常に温かく、希望に満ちていて、自然と応援したくなるものだ。
そして、そのように成長するなかで彼女はどんな生き方を選択していくのだろうか。スレイ・ベガとしての自分の力をどう使っていくことを選んでいくのか。それがとても楽しみでもある。
◇メッセージ性抜群の主題歌
主題歌がまた素晴らしい。
オープニングの「Here」は、JUNNAさんのファーストシングル。熱く壮大なタンゴ調のメロディラインに乗せて、「明日を目指して生きろ。君には君の居場所が必ずある。自分の命がたとえどれだけ小さく無意味でも、僕たちは生きたいと叫ぶんだ」という力強いメッセージを歌っています。
JUNNAさんの歌唱力(声量や感情の入れ方)はほんとに凄くて、一発で心をガーンと揺さぶられるようなポジティブな圧力がありますし、テンポもちょうどよく、伴奏も作りが細かく抑揚がしっかりしているのでループで聴いても飽きません。物凄くエネルギーが湧いてくる1曲です。「自分はここに居るぞ!!!」と心のなかで叫びたくなりますね。
歌詞に雨が出てくるからというわけではありませんが、なんとなく、雨が降っている日に道行く人たちを観ながら聴くのにピッタリな気がします。
糸奇はなさんが歌うエンディングの「環-cycle-」はオープニングとは対照的に、静かで優しい曲です。澄んだ歌声と、物静かではありながら色々な音が美しく重なっている伴奏。エンディング映像のように星空を眺めながらしんみり聴くのに最高でしょう。冬にいいですねぇ。
こちらも、生きるということ、居場所というものの尊さについて命の巡りをテーマにして温かく歌っています。
この曲、本編を観終えたあとの余韻を引き立ててくれて「あぁ~…」という気分にさせるんですよ。
◇まとめ
ここまで読んでもらえればお分かりのとおり、この作品はタイトルからは想像もつかないかんじの真面目な感動ファンタジーものなんですが、そういう感動のなかにちょっとしたコメディ(お茶目)要素もあったりして、緩急のバランスがいいのでとても観やすいですね。
切ないシーンや、きな臭い人間が出てきたり謎の魔の手が迫ってきたりといったヒヤッとするシーンもありますが、どす黒い気分になるようなことは無いと思います。というのも、なんだかんだ希望を手探りしていく物語だからです。
智世もエリアスも「心」を知らず、本当の愛がどういうものなのかもまだ知らずにお互い手探りで近づいていく様がひどく微笑ましい。そんな人間と異形の者とのピュアな恋愛ものとしての楽しみも勿論ありますし、
時としてエリアスのような人外の存在から心の在り方や命の在り方を魅せられることもあって、そういうシーンでは、ファンタジーだからこそ理屈抜きのド直球で描ける、人生についての強いメッセージに心を打たれるのです。
本編の絵の雰囲気にしても、話の内容にしても、秋から春にかけて観るのにちょうどいいなぁと思いますので、今回の放送期間はドンピシャでしょう。
私はAmazpnPrimeを利用してフルHD画質(1080p)で視聴しているんですが、絵もめちゃくちゃ綺麗です。非常に丁寧で絵柄にクセもなく、とっつきやいし、相当力を入れて作ってるのが分かります。本当に本当に綺麗なので、ぜひ高画質で観ていただきたい。オープニング映像は特に大好きです。
お世辞抜きで「アニメ史に残る名作」となる予感がありますので、本記事で気に成りましたらぜひご視聴ください。
◇関連情報
・アニメPV
(※※ PVは第3弾までアップされているようですが、事前知識を最小限にとどめて本編を視聴されたい方は、第1弾PVのみ観ることをおすすめします。※※)
・アニメ本編(Amazonビデオ)
・アニメ公式サイト⇒http://mahoyome.jp/
(↑放送情報もこちらの「on air」ページでご確認ください)
・制作会社様公式サイト⇒http://www.witstudio.co.jp/
・TVアニメ公式Twitter⇒https://twitter.com/mahoyomeproject?lang=ja
・MAGCOMI 原作情報ページ⇒https://comic.mag-garden.co.jp/mahoyome/
・原作者:ヤマザキコレ先生Twitter⇒https://twitter.com/ezoyamazaki00?lang=ja
【※※注意※※】アニメ・漫画関係のイベントや発売について、販売物などについては、原作者様に質問しにいかないように何卒ご配慮願います。なにか質問がある場合には、アニメ公式アカウント等に連絡してみましょう。
◆WEBラジオ
チセ役の種﨑敦美さん、エリアス役の竹内良太さんのお二人がパーソナリティを務めるWEB同人ラジオがYoutubeで配信されています。アニメ本編とは打って変わって、終始ウキウキな感じで元気に収録されてますので、作品をちがう角度からももっともっと味わいたい!という方はぜひ聴いてみて下さい。
◆グッズ情報
〇アニメイトオンラインショップ⇒https://www.animate-onlineshop.jp/products/list.php?mode=search&smt=%E9%AD%94%E6%B3%95%E4%BD%BF%E3%81%84%E3%81%AE%E5%AB%81
(URLはあえて短縮化しておりません。ご了承ください。)
〇Froovie⇒http://froovie.jp/shop/c/c28082/