P.A.WORKS「お仕事シリーズ」楽しみ方指南

「お仕事シリーズ」といえば、P.A.WORKSというスタジオが作っているアニメシリーズで、2017年現在においてはその3作目である『サクラクエスト』が放送中。過去2作品は、こだわりが強くわがままなアニヲタからも結構評判がよかった。2作目のSHIROBAKOなんかは神アニメとも言われてるし。

今回は、このシリーズがなぜここまで人気なのか…ということをちょっと語らせてもらう。

◆3作品それぞれのあらすじ

花咲くいろは

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お仕事シリーズ第一作目。物語のテイストとしてはあくまでも青春ストーリー。

本作の主人公、松前緒花はごく普通の女子高生。変わり映えのしない日常から逸脱して違う自分になりたいというような夢を描くことも有るロマンチストだが、だらしなく破天荒な母親を反面教師にしているためあくまでも根は現実的で、どこか人生に対する諦めのようなニヒルさを持っている。

ある日、緒花は母親の夜逃げ(恋人が借金をこさえたことが理由)に際して、単身、親戚筋の温泉旅館でお世話になることに。ただそこの女将さんが厳格な人だということもあり、所謂「働かざる者、食うべからず」ということで、緒花はその温泉旅館・喜翆荘(きっすいそう)で仲居として働くハメになるのだった。

知らない土地,知らない環境。おまけに旅館の仲居という、普通はなかなか経験しない仕事。今までの平凡な高校生とは全く違う自分になることを強いられた緒花。そこで様々なトラブルに直面し、様々な人と出逢い、様々なことに気づいて成長していく。

物語のとりあえずの執着地点において、緒花が最終的に手にしているものとは何なのか。どんな自分になっているのか…

という物語。

SHIROBAKO

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お仕事シリーズ2作目にあたるこの作品は、アニメ業界の知られざる裏側・仕事風景を、アニメ特有のけれん味や可愛さを駆使して、シリアスとギャグを織り交ぜつつリアルに描いたもの。

本作の主人公である宮森あおいは、高校のときにアニメ同好会に所属していて、自分をふくめた5人のメンバーたちと「それぞれ分野は違うけどアニメ業界に入って、いつか皆で一つのアニメを一緒に作ろう!」という共通の夢を持ちながら、アニメ制作会社・武蔵野アニメーションに就職する。

役職は制作進行。つまり作品制作のスケジュールなどを、絵を描く人間,音を入れる人間,CGやエフェクトを作る人間,監督やプロデューサーといった現場の人間たちと打合せし、随時管理・調整するという重要なポジション。

ただ、就職してまだ日も浅いうちから、ダメな同僚のミスなどが原因で作品作りは思ってもみなかった波乱の幕開けを迎えることになり、宮森はアニメ業界の過酷さにおもいきり翻弄されながら前を向いてあがき、制作進行としての優れた才能を表していく。

一方で、元アニメーション同好会メンバーの他4人たちも各々の職場,各々の舞台において、おおきな葛藤や挫折を強いられていた。

果たして作品は無事完結を迎えることができるのか。宮森たち制作スタッフたちは度重なるトラブルをどう乗り越えていくのか。元アニメーション同好会の面々は、自分たちが直面する困難をどのように乗り越えて成長していくのか。そして物語が結末を迎えるとき、彼女たちは「皆でアニメを作る」という夢を叶えることができるのか…!

というお話。

「花咲くいろは」が学生が現実に直面しながら成長していく青春ストーリーならば、この「SHIROBAKO」はまさしく“大人の青春ストーリー”。

そうそう想い通りにいくわけではない現実の中で、情熱を注いで楽しく仕事をしていくには…葛藤や挫折を乗り越えて成長していくには…ひとつの仕事に一生懸命に打ち込むってどういうことなのか…

そんなことが大きなテーマになっている。

※あくまでも、そういった人生における大事なテーマをアニメ業界を題材に描いているというだけであって、決してアニメファンに向けた単なる媚売りアニメではないというのが重要なポイントだと思う。神アニメという評判につられて観た非ヲタが、ここを勘違いしていることがたまに有るが(Amazonで見かけるレビューとしては「所詮はアニメかなといったところ。まぁアニヲタはアニメ制作の裏話が観られて面白いんだろうね」といった感じのとか)。

サクラクエスト

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お仕事シリーズ3作目。現在放送中の、一風変わったお仕事アニメ。

短大を卒業して就職活動をすすめる主人公、小春由乃(こはるよしの)。就職難の波にもろに飲まれ、現実の学生のほとんどがそうであるように仕事にたいして特に目標も志望もないので面接でアピールすることも無く、すでに30社以上の面接に落ちていた。(よくありそうな話)

そんなリアリティをしょっぱなから見せつけてくる今作。ここからが一風変わっている。

由乃は、かつて登録して1度だけバイトしたことがあるモデル派遣事務所から電話を受けるが、それがなんと丁度いいことに仕事の依頼だったのだ。

その仕事というのが間野山という寂れた田舎町からの依頼で、「町の『国王』になってほしい」というもの。当然わけがわからない。そもそも由乃は、故郷のような田舎を離れて都会で真新しい生活をしたいという憧れから、なんとしてでも東京で社会人になるつもりでいたのだ。母親から「こっちに帰ってくればいいのに」と言われても意地で断っていた状態。

しかしながら実家からの仕送りも絶たれた今、このまま見込みのない就活を無作為に続けるわけにもいかない…ということでしぶしぶ引き受け、とりあえずの繋ぎのつもりで間野山へ向かうのであった。

※ちなみにこの物語に出てくる『国王』というのは決してファンタジーなものではなく、バブルのときに日本の地方で実際に流行した町おこし「ミニ独立国」という役所仕事の象徴のことを指す。物語の舞台である間野山という所は、いまだにそんな町おこしを細々と続けているような、本当に寂れ切った田舎町なのである。

間野山に到着するやいなや、なんと自分は椿由乃という一昔前のアイドルと人違いされて呼ばれたという驚きの事実を突きつけられ、「ここでも自分は必要とされていないんだ…」と落胆する由乃。だが間野山観光協会としても、助成金を申請した後。

それに由乃が登録しているモデル事務所には契約金も支払ったあとであり、致し方なく彼女を国王として働かせることに。由乃はてっきりそれが1日限定のものだと思い込んでいたが、実際は1年契約の仕事だったのだ。はじめは逃げ出そうとする由乃だったが、色々あって、結局国王の仕事を引き受けることにする。といってもあくまでも一時的にのつもりで引き受けた由乃であったわけだが。(1話内容)

その後もまたいろいろあり、由乃はいっしょに働く4人の勇者(仲間)を見つけ、彼女たちと共に本格的に間野山の国王として町おこしの仕事をしていくことをついに決心する!

さてさてそんなこんなで間野山の新国王に就任した由乃は、これからどんな課題に直面し、それをどうやって乗り越え、どんなふうに成長していくのか。間野山の町おこしは成功するのか…!

という話。

◆お仕事シリーズの見どころは萌えではない

断言しておきたいのは、この「お仕事シリーズ」というアニメシリーズの見どころは決して萌えではないということ。絵的には今風の綺麗なアニメーションで、当然登場してくる女性キャラクターも美人でかわいい。髪の色がピンクだったり青だったりも現実的ではないし(アニメキャラだからべつに違和感はないんだけど)。

だけど、このシリーズがメインに描いているのは、あくまでも『お仕事』とか『人生』とか『人との関わり』とかそういうもの。

なので、美少女キャラへの萌えとか、ラノベ原作アニメみたいなワクワクとかを期待して観ると肩透かしを食らって「つまらん」となる可能性が高い。

『花咲くいろは』『SHIROBAKO』『サクラクエスト』すべてに共通している、お仕事シリーズの面白いところは、アニメでしか描けないキャッチ―さ,シュールさ,けれん味をはらんだ可愛さ,絵の美しさを活かして、

・「人生こんなもんだよね。生きてると色々あるよ。でもそこが読めないから面白い!」 

・「仕事してると決して楽なことばかりじゃない。楽しく仕事をしようとしても難しいことはある」

・「自分の無力さを痛感して腐りそうになることもあるけど、あがいて悩んでそこから立ち直ったときはすっごく気持ちいいよね」

・「いろんな人が居て、いろんな出会いが有って、苦手な人とかめんどくさい付き合いとかもあって、でもそういう刺激が楽しかったりもするし、思わぬところで関係が深まってかけがえのない仲間になったりもする」

・「やっぱり目標に向かって意思をハッキリもって懸命に駆けるって楽しいじゃん」

・「仕事ってめんどくさいとか辛いとか言われるけど、実は情熱があれば楽しめるものなんだ」

といった、生きていく上でたいていの人が直面するテーマ及びメッセージを伝えているところ。

「え~アニメ…?大人が観るもんじゃないでしょ」という一辺倒な偏見をなくして観てみると、わりと感動できる作品だと思います。

(私は、音楽を聴くにしても映画を観るにしても本を読むにしても、そういう一辺倒な偏見で蔑むような人って視野が極端に狭くてロクな大人じゃないと思いますし)

個人的にはこの作品群は、あれこれ文句が多くて作品のこだわりが強くて観ず嫌いの激しい、そんなよく居るガチのアニヲタよりも、いろいろ趣味あるけどアニメも多少~くらいの人や、あまりアニメ観ないような一般人向けの作品群ではないかなーと思っています。

◆感想・考察

私が1作目の『花咲くいろは』をリアルタイムで観ていたのは大学生のとき。当時は話がなんか重いなと思ってあんまり「好き!」というほどではなかった覚えがありますが、大人になってから観返してみるとあの作品も考えさせられるところが多い。丁寧に作り込まれた作品だったんだと。

社会人になる一歩手前って、たいてい誰でも期待と不安がいりまじったような、現実的な悲観と希望の間で揺れ動いていたと思うんですよね。そういう中でどうやって自分をしっかり持ってがんばって行けばいいのか、踏み出せばいいのか… 「自分探しってなんなんだろう」みたいなことを考える課題としてはすごくいい物語だったと思います。

2作目の『SHIROBAKO』は素直に傑作でした。アニメ制作会社なんて言うまでもなくほとんどの人は経験しない職場だと思いますが、ああして、たった一つの作品を作るのに何十人何百人の、それぞれ役割や技能,会社も違う多種多様な人たちが繋がって悪戦苦闘してる…というのは群像劇としてストレートに面白い。

普通のサラリーマン生活でなくああいう業界のああいう役職をモデルにしたからこそ、「仕事に懸ける情熱」「自分の役割を全うする気構え」みたいなものをあれだけ真っ当に描けたんだと思います。

本気でいいものを作ろうとしているからこそ生じるシビアな葛藤や挫折を、これまたアニメ特有のけれん味を活かしつつリアルに描き、それでいてちゃんとポジティブな物語に仕上がってるんだから、これは凄い。一番最後の方なんてマジで泣きました。

※何度も言いますが、アニメだとバカにして観なければ絶対楽しめる。そういう作品ですあれは。

そして現在放送中の3作目『サクラクエスト』

今回は新社会人というちょっと重苦しいあれがテーマで、しかも役所仕事という比較的地味な土台だから、結構な数のアニヲタが「展開が遅い」「つまらない」と一蹴してしまいそうな内容です。少なくともありふれた日常アニメ,コメディアニメのようなワクワクは期待できないでしょう。そういう緩急が無いですから。私の知り合いのヲタクも、「話がリアルすぎてちょっと観る気にならない」と言ってました。

ただこれも仕事とか人生とかを哲学して自分の刺激にするにはもってこいの作品だと思います。

実際私も「町おこしとかどうすればいいんだろう…」などと考えながら観てます(まぁほとんどアイデア浮かんできませんけどねww)

それと、サクラクエスト最大の魅力はキャラクターが前の2作品みたいにはぶっ飛んでないところかな。

普通に「あ~こういう人いる」「こういうことあるわ~…」と思うようなシーンが結構多いですよ。ほんとにリアルです。一部にはもちろん「こんな人いねえよw」と思うようなアニメらしいキャラも居ますけど。

そんな具合でリアルであるからこそ、社会人としてあるいは就活生として共感できるところも多く、いかようにしてハッピーエンドへ持っていくのかが大きな見どころでもあるんではないでしょうか。

2クールあるみたいですし、今年上半期のいい楽しみになりそうだ。

まだ観ていないという人は、ぜひここまでご紹介したことを参考に見てみてください!

リアルといってもあくまで前向きなお話ですので。お仕事や人生に悩んでいる人、疲れている人にもいいです。きっと自分の人生について考えるきっかけなり癒しなりになると思いますよ。

OP,EDも心が洗われる感じで元気出ますよ~

OP主題歌「Morning Glory」

ED主題歌「Freesia」

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