メテオラが引き起こしたフォーゲルシュバリエ現界を感知して、アルタイルはすぐにやってきた。
挨拶もそこそこに戦闘を開始した彼女は、いままで出来るだけ世界にゆがみを生じさせないようにおとなしく動いていたセレジアたちが今回は初っ端から全力で攻撃をしかけてきたことに多少は驚き違和感を感じとるも、余裕の態度で応援するアルタイル。
そこにアルタイル陣営のトロイの木馬と化したアリステリアもやってきて、鹿屋のギガスマキナの前に立ちはだかる。彼女の参上を見逃さなかった弥勒寺がすぐに攻撃して挑発。アリステリアはそれをかわして地上に降り立ち弥勒寺と対面するが、そこで彼の相手は別に居ると言われる。
弥勒寺がアリステリアの視線の先に顔をやると、そこには自分の世界での親友兼宿敵である白亜 翔(はくあ しょう)が居て、彼に襲い掛かる。
その横で鹿屋がアリステリアに必死で殴り掛っているが、ヒラヒラとかわされてなかなか当たらない…と、その最中、彼女は鹿屋に内緒話をささやく。
「時宜を計る。少年、分かっているな。」
自分がタイミングを見計らってアルタイルを裏切り仕留めるために、本気で殺しあっているように演技しようというのだ。
鹿屋はその申し出のままに、本気で戦闘を開始する。
戦闘が徐々に盛り上がっていくのに合わせて、メテオラが仕上げの術式を発動。ついにアルタイルを閉じ込め彼女の現実世界への影響力を限定する固有結界:通称『鳥籠(とりかご)』が完成した。
そんな中、会場で観客の一人としてこの戦闘の様子を眺めていた颯太のもとに真鍳が不気味な笑みを浮かべて現れるのだった…
アルタイルはセレジアのフォーゲルシュバリエやメテオラの兵器軍の攻撃を余裕で捌きながら、自分が結界に閉じ込められたことにすぐに気づき、そのことをモニターの向こうで観測しているメテオラたちに語って聞かせる。どこまで鋭いのかと唖然とする松原たち。
その上、彼女にはセレジアの本気の攻撃も全く通用しない。物理的な攻撃では歯が立たないことを悟ったセレジアは、松原が設定に加えた新たな能力を発動させる。
中国の占術・八門遁甲の概念を応用した無限の門「アイオニオン・アフォーリア」
アルタイルの姿は光に飲まれ、確かに消えた。無限の門のなかに閉じ込めることに成功したかに思えたが…
彼女はセレジアの背後をとっていた。
いかに無限でも、門がある限り出口もある。無数の門のなかの一つの出口を探りあてて脱出したのだという。やはり規格外なアルタイルの力を見せつけられて、皆茫然とするしかなかった。
彼女は〝承認力〟の存在もすでに把握していて、セレジアをここで殺してしまうこともできるがそれでは観客が面白くない(承認力を得られない)だろうと囁き、姿を消す。
すぐに再びセレジアの前に姿を見せたアルタイル。戦闘続行を促す。
その頃、ブリッツ・トーカーが自分の創造主である駿河のもとにやってきていた。
こうなることを読んでいた駿河は、あえて一人になって待ち構えていたのだ。
何か言いたいことがあるから来たんだろうと問いかけられ、言いたいことは山ほどあるがここで語るには時間が足りないから代わりに銃弾で語ると言うブリッツだが、そのセリフを一言一句たがわず駿河が被せてきたことに驚きを隠せない。
自分をいますぐに殺せば疑問に思っていることも尋ねる機会が無くなると駿河に言われ、不服ながらもその通りだと納得したブリッツは、彼女に問いを投げる。
「何故、娘はあんな死に方をしなければならなかったのか」
それに対する駿河の答えはシンプルだった。
「あれで話がおもろなったで」
ブリッツはそのあまりに身勝手な返答に怒り、躊躇なく銃弾を放つ。
神なのに慈悲もないのかと問うブリッツに、駿河は、自分が物語を描くのはアンタに安息を与えるためではなく読者のためであって、話が面白くなるのならいくらでもシナリオのなかで人を殺すし世界もひっくり返すと答える。
アルタイルも世界を壊そうとしているじゃないかと言う駿河に、ブリッツは「動機と理想は重要だ。彼女の創造主は忠を尽くすに値する人物だと思うがね」と答えるが、駿河から言わせればシマザキセツナは自分の復讐をキャラクターにやらせようなどと考える人間など物書きではなく、そんな者人間が書いたものは物語ではなくただの演説ぶった落書きであった。
お前は成功者だから彼女の味わった屈辱が分かるわけがないと言うブリッツに駿河は、
「最初から成功してる人間なんぞおるかこのボケが。あんたをひねり出すまでにどんだけ腹の底から泣いたと思うとんのや。ここ来てからも『あぁまだ足りへんのか』思た。どこまで行ってもそうや。たまらんわ。そういうん全部飲み込んで今日のここまで来とんねん。そんでもマシなもんが出来おったらそんなことの全部がなんでもええように成んねや。ほんま業が深いわ」
と自分の腹のうちを語って聞かす。
全て聞き終えてから、そんな子供じみたことに血道をあげるお前たちの気持ちは分からないと断じ、これからお前を殺したあとでこの会場に集まっているお前の仲間を皆殺しにして大暴れしアルタイルを支援すると、自分なりの面白いシナリオを語るブリッツ。
だが駿河は、そんなもののどこが面白いのかと返し、「自分ならアンタを動揺させてから娘のためにアルタイルを倒すことを決意させる」と言う。
「娘のために倒すべきはどう考えてもキミだ。」
「いや、うちが正しい。なんせ神様やからな。」
その直後、二人が話している部屋に自衛隊が突入。
意表を突かれてブリッツが硬直していると、そこに遅れて部屋に入ってきたのは、なんとブリッツの娘のエリナであった。
「ブリッツ、さっきウチなんて言うた? ウチはあんたの神様や。」
感想
今回は戦闘半分、ブリッツと駿河の会話半分といったところでしたが、戦闘に関しては正直、「アルタイル強すぎ」しかありませんね。
もともとバトルアニメの皮をかぶった哲学アニメという感じでしたが、回を追うごとに戦闘の重要度は薄れてきている気がします。
で、本題であるふたりの会話についての感想ですが、
まず、ブリッツの怒りや失望はまあ当然なんですよね。Re:CREATORS本編のなかでは『code・Babylon』単体の内容はそこまで詳しくは描かれてませんが、彼が作中で自分の娘を撃つしかなかったことだけは、ブリッツの回想という形で出ていました。
悲惨な物語の主人公全員に言えることですが、自分が愛する者のため世界のために必死になって戦ってそれでも今のところ一切救われず諦めるしかないという現実が、すべて外野の誰かによって娯楽として作られたストーリーだったと知ったら、そりゃ怒るのは当然なわけで。
娘をなんで死なせたかと訊かれて「アレで話が面白くなったから」て、まあその通りだろうけど、当人にとっては酷な話だよなあ…w
ブリッツはよく冷静に駿河の話に耳を傾けたなと思いますよほんとに。
彼がたとえば以前のアリステリアのような人格だったら、駿河の話なんか聞かずにすぐ撃ちまくって殺していたところでしょう。
それにしてもまさか娘を生き返らせて、そのうえ現界させるとは… 数か月しか時間がない状況でよくそこまでの承認力を得るだけのシナリオを組んだもんですね。さすが人気の漫画家といったところでしょうか。それに加えて、エリミネーション・チャンバー・フェスに参画している関係各所の手腕あってのものでしょうけど。
とにかく彼女が殺されなくてマジで安心しました。
そして、この作品ではたびたびテーマになることですが、『産みの苦しみ』というのが今回も力強く語られていたと思います。
好きなことを極めて仕事にして、つまりその専門職として生きていくとなれば、当然好きとか楽しいとかだけではやっていけないだろうということは言うまでもなく、「好きだし、自分が選んだ道だけど苦しい」という場面が山ほどあるのだろうと思います。
漫画描いて金になるんだからお気楽でいいよなとか、才能があるから生きやすくていいよなとか、そんなレベルの世界じゃないんですよね、多分。
腕を磨かずに怠けていれば置いて行かれるし、自分自身の納得も得られなくなっていくから修行に終わりがないわけだ。
画家なんかでもそういう苦しみは多そうですよね。
けどやはり駿河が言っていたように、いいものが完成したときの達成感というのはものすごいのでしょう。お金が入るのはもちろんうれしいでしょうが、何よりも、それよ買って読んで泣いたり笑ったりするファンが居るんだから、気持ちの充実ぶりは計り知れません。
架空の物語にそんだけ感動して熱心になれるんだから、人間て本当に不思議だし、すごいなあと思います。
『Re:CREATORS』には、漫画やアニメのファンにとっても、作品との向き合い方について参考になる場面が多いと思います。
‐余談‐
Youtuberが前に、大々的に「好きなことで、生きていく」なんて言ってましたが、あれ実質は「好き勝手やって、生きていく」ってことで、『クリエイター』なんつっても動画編集の本職でもないわけだから、本当のところはばくち打ちのアイドルもどき(広告塔)であって、あくまでも一般人だし、単なるユーザーサービス利用者なんですよね。
グッズを出してそれがたくさん売れるようになったり、企業から依頼と契約金をもらってゲーム実況する「弟者」さんクラスになると立派なフリーランスの宣伝屋と言えそうですが。
まぁとにかく、『プロ(専門職)』って本来そういうもんだよねということが言いたいわけです。
※これ読んでる10代20代のあなた、Youtuberに『プロ』の姿を見出して憧れたりしちゃだめですよ絶対に。あれはパソコンが好きでしょうがなくて自作したりしているうちに知識や技術が身についてエンジニアやプログラマになるとか、絵を描くのが好きで極めてイラストレイターになるとか、ブログなどで文章を書くのが好きでそれが高じてライティング業や編集業に就くとか、歌がうまくて歌手になるとかいうのとはぜんぜん違う在り方ですから。